酔う子のユーラシア大陸お散歩ログ

ソムリエで料理研究家の酔う子が自由気ままに世界で飲み歩く様子をお届け

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ピスコの歴史
ピスコは、スペイン人が南米に来てぶどうの木を植え、作ったワインを蒸留したものです。
ぶどうも、蒸留技術もスペイン植民地前の南米にはありませんでした。
ソムリエ教本を見ていると、新大陸をみつけたら、キリスト教を布教して教会つくってぶどう植えるところまでが植民地化のセットで行われています。
その証拠に新大陸発見から3,4年ではじめてのワインが作られています。
スペイン人がペルーでぶどうを植えてワインを作ってみたら、なんだかとても美味しいものができました。
しかしそのおいしさは、本国スペインのワイン産業を脅かすと考えられてしまい、しばらくワイン作りは禁止されていたようです。

ペルーではワインは作られなくてもそれを蒸留してピスコを作っていました。
つまりピスコはワインを蒸留したものであり、搾りかすを蒸留したマールやグラッパではなく、樽熟成しないブランデーです。
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ピスコという名前自体はケチュア語の「ピシュコ」という鳥の名前に由来する街の名前でした。
その後アメリカでゴールドラッシュが始まった頃、ピスコがサンフランシスコにやってきて、あっという間に人気ドリンクになりました。

2000年代に入ってからは本国ペルーではビールやらウイスキーが好まれるようになってしまい、ピスコの生産量と売り上げは減りました。
それに伴いぶどう畑も縮小されていき、文化的に危ういということで、ペルー政府は原産地呼称制度を制定しました。
ピスコという名称は、リマ 、イカ、アレキパ 、モケハ、タクナで生産されたぶどう由来の蒸留酒にのみ適用可能となりました。
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ぶどう品種
ピスコに使われるぶどうは以下の通り、その中でも香りが強めのものと弱めのものに分けられます。
香り強め
イタリア、アルビージャ、トロンテル
香り弱め
ケブランタ、ネグラクリオーリャ、モジャール、ウヴィーナ
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味の差別化
これらのぶどうは単一品種だったり、混ぜたりしてピスコになります。
単一品種のものはピスコピューロ、混ざったものはアチョラードといいます。
混ぜるか混ぜないかは味や香りが違ってくることも想像しやすいのですが、もう一つモストベルデと呼ばれるものがあり、これは完全に発酵しきらない果汁を糖度がまだ高めな状態で蒸留する手法です。
こうすることでフルボディめなピスコが生まれます
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じゃあなにが結局美味しいのか、という話ですが、ピスコらしさを考えると、アロマティックなぶどう品種で作られたものが私個人は好きです。
トロンテルやイタリアなんか素敵です。
アチョラードも混ぜる品種によって全然味が違ってくるので、一重にアチョラードだからどう、と言えるものでもありませんが、私は割と香りが良く美味しいものに当たっています。

私はわざわざイカのワイナリーまで行ってピスコを飲みましたが、基本甘いカクテルベースのようなピスコばかりで微妙でした。
説明受けて飲み比べがしたいなら、個人的にはリマのミラフローレスのピスコミュージアムというところが品揃えも説明もとても良かったです。

インカ帝国の祭事や生贄、政治関連の文献に必ず出てくるお酒が、チチャと呼ばれるトウモロコシのお酒。
私は昔からミイラが大好きで、アンデスの山の中で凍ったまま見つかった生贄の女の子のドキュメンタリーでも、お腹からもコカの葉とチチャが検出されたと言ってました。
その再現VTRでは、コカを噛んでチチャを飲んで朦朧とした彼女の頭を殴ったのではないか、という叙述がありました。

インカ帝国の国民は、現代同様税金を納めていました。
その税金の見返りとなったのが、チチャだそうです。
この酒を楽しみに、国民はせっせと働き、お城だかお役所だかではチチャをわんさか醸していたそうです。
(クスコのマチュピチュ博物館より)

チチャはトウモロコシをなんとか糖化させ、発酵時に加えるイーストとなるのは古来は人間の唾液です。
古来の日本酒の起源である口噛み酒と同様だそうです。
おそらく現在はさすがに人工イーストを使っていると思われます。

そんなチチャを、ペルーに来たら絶対飲んでみたい!と思って探してたけど一向に見つからず、そこからは執念で地元民に聞きまくってやっと辿り着いたのが、クスコのレストランLa Cusqueñita。
割と観光客か富裕層向けのようで、インカの伝統舞踊ショーがあったり一皿1000円近いお料理が並びます。

ドリンクメニューのところにちゃんとChicha de Joraと書かれています!
Joraってなんなのかよくわかりませんが、この国でチチャというと大抵ソフトドリンクのチチャモラーダのことだと思われます。
チチャモラーダは東京は五反田のキョウダイマーケットで昔買ったことがあるので、こっちなら日本でも飲めるはずです。
しかしチチャモラーダはチチャとは全く別物。
だからお酒について知りたい場合は、Chicha de Joraと言う必要があります。
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5ソル(約160円)なら安いしお手頃やなと思って頼んだら来たのがこの巨大ジョッキ。
なんか1リットルくらい入ってる気がします。
生贄少女のドキュメンタリーの再現VTRではもっと小さいグラスだったのに!
上にシナモンがかかってるのはきっとこのお店のオリジナルだと思います。
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お味は、甘酸っぱくて、飲むヨーグルトみたいな感じ。
例えるならヤクルトかカルピスという感じでした。
アルコール度数はかなり低いようで、私にはほぼ無アルコールくらいにしか思えませんでした。
昔はもっと発酵させていたのを、現代風に甘さを残して飲みやすくアレンジしているのか、昔の人がこんなのでも酔えたのかはわかりません。
体質もあると思いますが、個人的にはよっぽど体調が悪いとか、お腹空いて飢えてるとか、高度がすごいとかでない限り、これで朦朧とするほど酔えるとは思いません。
もし甘さを残した状態で冷やすことで発酵を止めているのであれば、発酵の早いお酒なので、プルケ同様国外などに売るのは難しいと思われます。

最後にレストランでやってた伝統舞踊のワンシーンを貼っておきます。
女性がクルクル踊るので、スカートが上がって、どうなるのかとヒヤヒヤしてました。
ペチコートみたいなのはいてました。
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【追記20191212】
今日は聖なる谷ツアーに参加してきました。
そこでガイドさんが言ってたのですが、写真のような、長い棒の先に赤いのをつけてるのを掲げてるところにチチャがあるらしいです。
もっと早く知りたかった!!!
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それを聞いてから気をつけて見てみたところ、ローカルな住宅街ほどたくさんこれがありました。
観光地にはほぼありませんでした。
幹線道路があるローカルな住宅地には、30メートルおきぐらいにあるところもありました。
また、この赤い部分は、お花をつけてるところもあれば、お菓子のパッケージとか張り合わせてるところもありました。
これがクスコ近辺以外で同じかはわかりません。


メスカルの作り方は前の記事で書きました。
こちらは味やらなんやらに関することを書きます。
メスカルは味を左右する要素があまりにもありすぎて、もうお店の人にどういうのが好きか言って飲むしかないな、という結論に達しました。

テキーラにおいて重要だったのは樽熟成の長さ。
メスカルにおいては、樽熟成2か月以下のものをJoven/ホベン、2か月から1年のものをReposado/レポサド、それ以上をAñejo/アニェホと呼びます。
エクストラアニェホは存在しません。

メスカルには果物やらなんやら漬け込んだものがあり、それをAbocado/アボカド、と呼びます。
実際にアボカドが入っているわけではありません。
有名な芋虫入りメスカル、グサーノもこのアボカドの一種となります。

メスカルの蒸留時にフィルターとして鶏むね肉を使う場合があります。
こうすることで口当たりが滑らかになります。
また、フルーツやハーブと一緒に蒸留するときにも、通常鶏むねをフィルターにします。
この鶏むねフィルターメスカルを、Pechuga/ペチュガ、と呼びます。

もちろんアガベの品種も大変重要で、よくあるのがエスパディン、トバラなどです。
同じアガベでも畑による違いもあれば、蒸留器の違いでも味が大きく変わってきます。
また、単一品種のアガベで作るだけでなく、いろんなアガベを混ぜる場合もあります。
昔は山に入って品種関係なく良さげなアガベを適当に伐採して作るのがメスカルだったそうで、言わば伝統的という風にもとれます。

これが確かよくあるエスパディン
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これはアガベ・カルウィンスキーというもので、芯が棒状になっています。
草っぽいきゅうりみたいな香りが強く、私はこれが好きです。
ラベルにはCuishと表記されます。
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テキーラが甘みがあるのが良いもの!と大体正解があったのに対し、メスカルは全てが正解です。
これがメスカルの味の表現盤。
例えばミネラリーな中にも塩気があるのか、はたまた鉄っぽいのか、、と大変詳細に分類されています。
もう果てしないです。
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今回は1軒目で10種類以上(もはや覚えきれない)、2軒目で8種類のメスカルを飲みました。
試飲レベルとはいえ、ベロベロでした。

一軒目の蒸留所はこちら。
通常の蒸留器と伝統的な土器の蒸留器とでは、伝統的な方が攻撃的な味でおそらく雑味が多すぎて、喉を焼かれるようなアルコールでした。
個人的には赤いラベルのJoven Silvestreというのがフローラルな香りでとても好きでした。
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2軒目の蒸留所ではメスカルのみならずジンも作っていました。
まずは2回蒸留で普通のメスカルを作り、3回目にジュニパーなどなど入れて蒸留するそうです。
ジンに書いてある番号が、入ってるスパイスの種類です。
8種のやつは普通のジン、3種はアガベ臭さもわずかに残り面白い、32種になると複雑すぎてわからない、という感じでした。
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メスカルで使用するアガベは複数種類あるのですが、その育成期間も品種によってまちまちです。
短いものは7年、長いものは30年ほどかかるものもあります。
(写真はアガベの苗木)
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そのためアガベの生産量を一定に保つのが難しく、それに応じてメスカルの生産量も上がったり下がったりするそうです。
メスカル産業において持続可能性というのは現在最も注目されているテーマの一つで、2軒目の蒸留所、Gracias a Diosでは、壁材としてアガベの繊維を利用したり(写真)、発電にもアガベの繊維を燃やすなど、色々な工夫をされていました。
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メスカルは沼のように奥が深い飲み物だということがよくわかりました。
現在アメリカではテキーラよりもメスカルが人気で、「ヒップスターテキーラ」という扱いで取り扱う飲食店が急激に増えだしているそうです。
日本でももっとメスカルを輸入してほしいな、と切に思います。

今日はメスカルツアーに参加しています。
こういうツアーっていつもトリップアドバイザーを使うんですが、オアハカのツアーは全く充実しておらず、Airbnbの体験から予約しました。
今回は2ヶ所蒸留所を巡るツアーです。

メスカルとはリュウゼツラン・アガベから作られるお酒です。
テキーラとはよく混同されますが、テキーラはメスカルの一種で、生産地域と使うアガベの種類が限定されていること、製造方法の違いなどがあり、つまりメスカルのほうが大きな括りになっています。
主にこういう品種のアガベを使う、というのはありつつも、メキシコの原産地呼称だと、アガベから蒸留した酒をメスカルとする、と定めているそうです。
メスカルを原産地呼称のブランドとして最初に認定したのはスペインのハプスブルク家最後の王、カルロス2世です。
認定させたのはかの有名なホセクエルボ、当時はテキーラもメスカルの一種でした。
メスカルを好む人がニュースペイン(当時のメキシコの呼称)には多いにもかかわらずスペイン本土に出稼ぎに行く人が多かったため、そういう人を呼び戻すために取られた政策の一つだったということです。

蒸留所がたくさんある地域に入るときの看板には、蒸留機が乗ってて可愛いです。
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1軒目はこちら、リアル・マトラトルで生産方法を見せてもらいます。
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まずはテキーラ同様アガベをローストします。
この焼き方も色々あり、このような石だったり、ピザ釜みたいなのだったりするそうです。
ここで3日焼いて、さらに寝かせると、糖度が上がるとのことでした。
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焼いたアガベは、このあと挽いて繊維状にするための下準備として粉砕します。
やらせてもらったけど、このナタどんなに頑張っても下まで切れません。
熟練する必要があります。
そしてこの時点のアガベを食べさせてもらったところ、水分たっぷりでジューシーな干し芋のような味がしました。
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粉砕したアガベは馬にひかせて繊維状にします。
テキーラはここは機械でしたが、ここも伝統的に馬でやるのがメスカル流です。
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粉砕したアガベに加水(お湯)し、このまま自然にイーストが飛来するのを待って発酵させます。
気候がよければ3-4日程度で発酵が完了します。
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発酵させたものをアガベごと蒸留機に突っ込んで蒸留します。
蒸留はテキーラ同様2回行います。
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蒸留機はスペイン人が持ち込んだものでした。
アステカ含むメソアメリカの原住民は金属を知らなかったため、土器で蒸留器を再現しました。
ツボの中に発酵物を入れ、一番上の柄杓状の部分にに氷や冷水を入れます。
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中はスコップ的なものが入っており、蒸気が上の冷水部分で水滴に変わり、このスコップを伝って外のホースに出て行きます。
この蒸留機のあり方でも味が変わります!
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ちなみにこちらは2軒目の蒸留所の蒸留器。
このパイプが高ければ高いほど、純度の高いアルコールが取れるそうです。
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こちらは遺跡から出土した謎の土器のレプリカ。
もちろんスペイン勢が来る前のものなのですが、正確な用途は分かっていません。
しかし色々通説はあり、一説には蒸留器だったんじゃないか、というのもあるそうです。
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味や分類などは別記事に書きます。

世界で一番博物館があるらしいメキシコシティ。
プルケに続いてテキーラにも来ました。
この博物館の裏は、マリアッチがたくさんいて有名な、ガリバルディ広場です。
勉強不足でメキシコとイタリアの関係はわかりませんが、なんだか世界各国で聞き覚えのある地名が多いです。
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まずはリュウゼツランの種類とその栽培地域の分布。
これが知りたかった!!!
テキーラに使われる品種とメスカルに使われる品種は違うようです。
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次に製造方法。
リュウゼツランを蒸す機械や挽く機械の説明があります。
蒸留回数もテキーラとメスカルで違ってきます。
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こちらはアステカのリュウゼツランの神さまです。
なんとこれで女神らしい。
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博物館はこの程度です。
正直もっと知りたかった。
情報が多いと蒸留所ツアーに行かなくなるのかしら。

博物館の上はレストランバーになっており、こちらで半券を見せるとメスカルとテキーラを1つずつもらえます。
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メスカルを飲んでライムを噛み、テキーラを飲んでオレンジを噛むよう指示されます。
美味しい!
美味しいから飲み比べたいけど、値段高すぎて抵抗があります。
もう一杯だけ、クリームメスカルを頂いて帰りました。
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こちらのレストランからはガリバルディ広場が見渡せます。
下にはリュウゼツランも生えています。
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