酔う子のユーラシア大陸お散歩ログ

ソムリエで料理研究家の酔う子が自由気ままに世界で飲み歩く様子をお届け

タグ:ナスカ

ナスカの遺跡見学はとても高価です。
他の地域だと大型バスのツアーがあるけど、ナスカは基本的にみんな地上絵しか興味がないから、遺跡ツアーはプライベートツアーくらいしかないのではないでしょうか。
私が行った時もこれらの遺跡に他の観光客はポツポツしかおらず、みんな乗用車できていました。

ここはカワチのピラミッド、ナスカ文化時代の儀式の場所だそうです。
現在のナスカの街からは離れていますが、近くには地下水が流れる場所があり、山を越えればパンパが広がり、地上絵が書かれている文明の土地です。
ピラミッドというか、5階建くらいの建物だそうです。
発掘が始まったのは約40年ほど前だそうですが、お金がなくて発掘が思うように進んでいないそうです。
この辺り一帯には40個ほどこういう建物があるらしいけど、まだ1.2こしか掘り出せておらず、未だ発掘中です。
40個もこんなのがあって部屋が細かく分かれていたら、儀礼ではなく住居と考えるのが自然な気がしますが、なぜ儀礼用とわかるのかまではガイドさんは知りませんでした。
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こちらは現在のナスカの街のはずれにある給水所の遺跡。
雨の降らないナスカですが、近くの山に降った雨が地下に多くあり、地下水を引いて古から現在まで田畑を潤しています。
この地下水の用水路は、高いところから低いところに流れています。
水路を真っ直ぐ作ると水の流れが早くなりすぎるため、このようにわざと蛇行させているそうです。
2000年前の、紀元前の人がもうこんなことを考えていたとは。
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これは給水所の上流部分。
水路は地下深くにあり、年に一回くらいは水路を掃除する必要があるため、水路に降りていく螺旋状の道を作ったそうです。
このぐるぐるが10メートルおきくらいにしばらく続いています。
この均一なぐるぐるは、地上絵にも使った棒杭を使って設計したのではないでしょうか。
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水路はこのように細いけど、高さは1メートルくらいあります。
山の方が雨季まっさかりのときは、水路いっぱいに水が流れるそうです。
いまはそうでもないので半分くらいしかみずがありません。
かつてはここに人が膝立ちで入っていって掃除していたそうです。
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5階建もある建物を作ること、綺麗なぐるぐるを作ること、掃除という概念があること、もちろん地上絵を描いたことなど、ナスカ文化の異常な高度さを目の当たりにした一日でした。
宇宙人とかタイムマシンとかそろそろ出てきてほしいです。

ナスカ平原の文明は紀元前から続いてきました。
地上絵を作ったナスカ文化は今から約2000年ほど前に興りました。
そこから約1000年後に栄えたのが前インカ文明です。
その前インカ時代のお墓がここナスカに残っています。

奥に見える緑地部分は、地下水が流れる川です。
人々はそこに住んでいました。
そして人が死ぬと、この砂地部分に葬りました。
ここには約500のお墓があり、ほぼ全て盗掘されたものの、一部は観光用に解放されています。
盗掘は主に布地と土器などの副葬品を狙って行われました。
この広い砂地のあちこちにある破片や白骨は盗掘の痕跡です。
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お墓はこんな感じのプライベートな一人部屋から
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ドミトリー形式のものまで様々です。
この時代の人は死ぬと内臓を抜き、肌に薬草を塗って、乾燥した大地にしばらく遺体を放置してカラカラにしました。
その後乾いた遺体の手足を折って体育座りに整えました。
ミイラは全て再生を願い、日の登る東側を向けて安置してあります。
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こうやってむき出しで展示されているものもあります。
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夜行バスでナスカに着いてからずっとツアーしていたので、町歩きは夕方から開始です。
疲れた頃になんかおかしいなと思ったらホテルが停電してました。
外に出てみると町中停電してました。
家の中は暑いので外に出てみるという発想の人で町はごった返してました。
ここの人たちは、クスコなんかにいる平たい顔族ではなく、もうちょっとアフリカの要素があるようにおもえました。

小学校の壁にまでナスカ文化のデザインが書かれています。
これが2000年前のデザインなんて信じられません。
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道端で久々にエモリエンテの屋台を見つけたので頼んでみました。
ナスカのエモリエンテは茶色でした。
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中心部アルマス広場では、ダンスバトルしてる人、クリスマス近いから聖歌を歌う人、バレーボールする学生さんでカオスでした。
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広場前の市役所。
こんなところもナスカ土器デザインで徹底しており、とても秀逸だと思いました。
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私の中で3大憧れの考古学者は、ハワード・カーター(王家の谷ツタンカーメン)、ハインリヒ・シュリーマン(トロイア遺跡)、そして最後がこのナスカの地上絵の研究に貢献した、マリア・ライヒェです。

第一次対戦前にドイツに生まれた彼女は、ヒトラーの支配下なんかで苦労しながら数学教師の資格を取ります。
ある日ペルーのクスコでの家庭教師の仕事を見つけてペルーに来ることになりました。
家庭教師を辞めた頃地上絵が発見され、彼女は発見した考古学者の助手となります。
彼女は極寒酷暑のこの平原(パンパ)を日々歩き回り、地上絵を調査し、掃き清めました。
調査の折には得意の数学の知識を生かします。

そんな彼女が地上絵を見るのに使った物見やぐらがこちら。
ナスカ市内から30キロほど離れています。
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彼女はここから地上絵を観察していました。
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ナスカ平原はこのように表面だけが黒っぽい石で覆われ、ちょっと掃くと白い地面が露わになります。
しかも年中ほとんど雨が降らないため、掃き清めたところがまた黒くなることはほぼありません。
これがどんなもんか、私はずっと自分で見たかったので感無量です。
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物見やぐらのすぐ近くには、マリア・ライヒェの家が博物館として展示されています。

こちらはナスカ周辺における文化の変遷と年表、土器の模様の変遷つき。
大変ためになると思って撮影しました。
地上絵周辺で見つかったものもここに色々展示されています。
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これはマリアの研究していた図面は実に数学者らしいなと思います。
この図は後に、楠田枝里子さんの著作の表紙に使われています(後述)。
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マリアが実際生活していた部屋も残されています。
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壁にかかった図面やメジャーが彼女の情熱を物語っています。
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こちらのワーゲンは、マリアの妹が、毎日砂漠を徒歩で調査しまくるマリアを見かねてプレゼントしたものだそうです。
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マリアは晩年パーキンソン病にかかり、1998年にリマで息を引き取ります。
その後はナスカの家の庭に妹と共に埋葬されました。
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マリア・ライヒェの生涯についてはこちらの本に詳しく書かれています。
著者は世界ふしぎ発見でもお馴染みの楠田枝里子さん。
楠田さんがマリアの生涯を追いかける様子から書かれており、マリアと地上絵にしか興味がない人にはその描写が冗長に映るかもしれませんが、1980年代のまだネットが普及する前の東ドイツへの旅行の苦労など、私にとってはもはや歴史とでもいうべき状況描写はとても興味深く感じられました。

もう色んな人がブログやらにあげてるんだろうけど、私は自分の記録のために書いておきます。

ナスカの地上絵のことは、ドラえもんの世界遺産図鑑みたいなので知り、自由帳なんかにもよく描いていました。
色々世界のオーパーツや古代文明の謎本を読み漁る中、小学校の頃読んだこの本がとても記憶に残っています。
 
まじょはかせと呼ばれる考古学者がタイムスリップとかする話なのですが、ナスカ文化における製図時の棒杭の使用やナスカ文化では気球を使ってた説など、現代でも通用する説が上手く物語に織り込まれています。
特に宇宙飛行士の地上絵なんかは、この本を読むと平常心では見られなくなります。
 
高級夜行バスのCurz del Surでアレキパからナスカまで移動、朝イチで地上絵飛行と飛行場税30ソル、そこからナスカ文化の遺跡巡りなどなどで、合計250ドルくらいかかりました。
たっけえ、って思って思います。
朝イチは寝不足だし、その上に知らされてない空港税30ソルだし、めちゃくちゃ不機嫌でした。
でも空を飛んだら、地上絵を見たら、胸がいっぱいになって、値段なんてどうでもよくなりました。
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最初に見えたのはクジラ。
この写真だと頑張らないと見えないんですが、実際はもっとくっきり見えます。
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私が一番見たかったもの、宇宙飛行士。
これだけ山肌に書かれているのはなんでだろう。
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これはおなじみハチドリ。
この絵、何回自由帳に描いただろう。
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これらのド定番地上絵が有名ですが、それよりもこのコンパス、と言われる三角みたいな地上絵がたくさんあります。
これらは定番の絵よりもはるかに大きいです。
宇宙船の滑走路説もありますが、紀元前のナスカ文明のこの地上絵やその他の知恵の粋を見ていると、宇宙人だとかタイムマシンだとかも言いたくなる気持ちはよくわかります。
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また、飛行時間の制限もあるせいか、説明されなかった地上絵もたくさんありました。
よく見たらこれも地上絵だ!みたいなやつもたくさんありました。
小さい頃から憧れていた、ナスカの地上絵を肉眼で見て、新たな地上絵探しなんかもできて、私はもう本当に幸せです。

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