酔う子のユーラシア大陸お散歩ログ

ソムリエで料理研究家の酔う子が自由気ままに世界で飲み歩く様子をお届け

タグ:スパイス

スパイスは、日本のスーパーではよく粉状のものが売られています。
しかしその粉の元は、種だったりとか樹皮、葉っぱなど色々な形をとっています。

香りは、植物の細胞に閉じ込められています。
香らせるためにはその細胞を破壊する必要があります。
だから例えばクミンシードをそのまま煮えたトマトに突っ込んでカレーにしてもまあ美味しいけど、香りのポテンシャルがフルに発揮されているわけではありません。
細胞を破壊して方法はいくつかあって、粉にする、油で炒める、空炒りする、などです。
日本のスーパーでよく売られているスパイス類は、だいたい粉になっているので、初心者はそれを買って使うのが良いと思います。

油で炒める方法は、一般的にオイルテンパリングと呼ばれます。
油で熱することで、油にも香りを移して食べ物全体に香りを行き渡らせる方法です。
インドで、例えばクミンシードやマスタードシードなど、ホールスパイスを使う時は一般的にオイルテンパリングが使われます。
中国でラー油を作る時なんかも、油で唐辛子を熱して作ります。

空炒りすることで香りを高める方法もあります。
私は油ですぐ胃腸がやられてしまうので、最近はこの方法でカレーを作っています。

スパイスって、定番のもの以外は通常のスーパーで手に入りにくいため、代用することもままあると思います。
その際に参考になるように、これを書いておきます。

植物は部位によって風味が違います。
葉っぱ、幹、果実、花、、それぞれ異なった風味を持っています。


例えばカレーを作るのにコリアンダーを使いますが、ここでいうコリアンダーはコリアンダーの種のことを指します。
コリアンダーとパクチーは同じもので、葉っぱは確かに癖のある香りですが、だからといってコリアンダーの種の部分も同じ香りがするかというとそんなことはありません。
分子構造や組織構造が違うから形が異なっているのであって、そうなると必然的に風味も違ってきます。

では代用はどうするか。
近い部位のものを代用に使いましょう。
例えばコリアンダーの種の代用であれば、同じように土の下で育っている根っこ部分が代用に使えます。
すりつぶしたり刻んだりして、オイルテンパリングすれば、かなり近い感じになります。

例えばアロマテラピーではオレンジは各部位で別の名前の精油になっています。
果実部分はもちろんのこと、花の部分はネロリという名前で呼ばれ、香水などで多用されます。

ジョージア料理で使うウツホスネリは大変独特で、日本で手に入りにくいスパイスの一つです。
これはフェヌグリークという植物の新芽部分を乾燥させたものです。
フェヌグリーク自体はインド料理などでも良く使われるので、新大久保とかのエスニック食材のお店で手に入ります。
これもシードとリーフがあるので要注意です。
このフェヌグリーク新芽部分の代用は、リーフを使うのが比較的近いと思われます。

パクチー嫌いだからコリアンダー使わない!とか、コリアンダーの代用に葉っぱ!といった使い方をしてる方もいらっしゃるようですが、これを参考に美味しさの幅を広げてもらえればと思います!

ジョージアはスパイスやハーブを大変たくさん使用します。
しかもミネラル分豊富な土壌と乾燥した空気が手伝って、スパイスやハーブの香りが際立ち、いつもスーパーで買ってるスパイスとは全く違う香りがします。
クミンなんて本当に別物だし、バジルなんかは乾燥のものでもバジル本来の紫蘇に似た香りが立ち上ります。

そんなスパイス&ハーブ大国ジョージアを代表するミックススパイス、フメリスネリ。
フメリは知りませんが、スネリはジョージア語でスパイス的なものを意味するようです。
このミックススパイス、とっても絶妙な調合で、肉や野菜のうまみを上手に引き出してくれ、また日本人が得意ではないハーブ独特のツンとしたにおいもほとんどありません。

このスパイスの調合レシピは以下

フメリスネリ(ხმელი სუნელი, Khmeli suneli)
バジル
パクチー(葉)
マジョラム
ディル
赤唐辛子粉  これは全体の2%ぐらい
マリーゴールド(サフランで代用可能) 全体の0.1%
イタリアンパセリ
セイボリー
ローリエ
チャービル
ミント
フェヌグリークの新芽

こちらがジョージアで売られているミックススパイス。
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このミックススパイス、お肉と野菜が合わさったときに本領を発揮します。
トマトスープを作るときなんかは、お鍋1つに対して大さじ2杯ぐらい入れます。

今回ご紹介するのは炒め物ですが、フメリスネリがお肉と野菜のうまみを上手に引き出しています。

チャホフビリ(ჩახოხბილი, Chakhokhbili)
材料
鶏むね肉      500グラムぐらい
玉ねぎ       半分
トマト       2個(カットトマト缶なら2つぐらい)
パクチー      1束
バジル       葉っぱ10枚
イタリアンパセリ  1束
ピーマン      1個
にんにく      2かけ
粉唐辛子      大さじ1(辛い物が苦手な場合は控えめにしてください)
フメリスネリ    大さじ2
白ワインビネガー  50cc
塩         小さじ1から始めて調節

作り方
①下ごしらえ:鶏むね肉を食べやすい大きさ(でかめの唐揚げぐらい)に切り、塩、ワインビネガー、ローリエ、フメリスネリ、粗みじん切りにした玉ねぎ、にんにくのみじん切りと一緒に3時間ほどマリネしておく。
トマトはできれば皮を湯剥きして粗みじんに切る。皮をむくのがめんどくさい時は、カットトマトの缶詰を使う(しかもその方が安上がり)。
パクチー、バジル、イタリアンパセリは刻んでおく。
ピーマンはみじん切りにしておく。
②フライパンに油(分量外)を敷いて、①のマリネしておいた鶏肉を一緒にマリネしてた汁や野菜も一緒に入れる。
③肉に軽く焼き色がついたら、トマト、パクチー、バジル、イタリアンパセリ、ピーマン、粉唐辛子を入れる。
④全体にとろみがつくまで約15分ほど煮込み、塩で味を調えて完成!もしトマトの酸味が目立つ場合は、みりん小さじ1~か砂糖ひとつまみをいれてまろやかにしてみてください。


ワインビネガーを漬けこんでそのまま焼くとき、みんな「酸っぱいんじゃないの?!」とよくびっくりされます。
ほんと、全然そんなことないからぜひともやってほしいです!
肉はふわっふわに柔らかくなってるし、味はしみしみです!


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