テイスティングの勉強を始めてからぶち当たった壁の一つが、「ワインのミネラル感」である。 

ワイン変態達が集まるブラインドテイスティング勉強会では、「ミネラル感があるから石灰土壌だからこの産地」という当て方をよく耳にした。
とはいえミネラル感とはどんなものかと聞いても明確な答えがないことがほとんどである。
一度ボルドーの沿岸部で生産されたソーヴィニヨンブランを飲んだ時、明らかに貝殻と潮の匂いを感じ、これぞミネラル!というものに遭遇したが、そうではない物がほとんどである。

そんな曖昧な、ミネラル土壌かどうかの判別ポイントの一つが、香りが上に行くかどうか、である。
ワイングラスをスワリングして嗅いだ時に、香りがグラスに籠るようになっているものと、ワイングラスを近づけた段階で香ってくるものがあり、ワイングラスを軽く近づけるだけで香りのほうから鼻に入ってくる感じがするものが「ミネラル感がある、石灰土壌」と判別される一つのポイントである。

一度石灰土壌とそうでない土壌で育った同じ品種のブドウを、同じ規格のグラスで飲み比べてみてほしい。

ジョージア料理の基本の調味料は前回書いたとおり、くるみ、コリアンダー(シードのパウダー)、にんにく、ワインビネガー、サフラン、唐辛子(パウダー)など。
前回紹介したのは前菜料理でしたが、今日はこの調味料をつかったお肉料理を紹介します

サツィヴィ(საცივი / Satsivi) (鶏肉のクルミソース)
材料
鶏肉(本当は丸鳥なので、できれば骨付きがよい。 肉の部位はとりあえずモモあたりでよい)500グラム

★ソースの材料
玉ねぎ 1個
にんにく 2かけ
くるみ 300グラムぐらい
塩   小さじ2から始めで調節する
唐辛子パウダー 小さじ1.5
コリアンダーパウダー 大さじ半分
シナモン  小さじ1
ワインビネガー 大さじ半分

オプション(日本人にはなくてもあんまりわからないスパイス)
フェヌグリーク    大さじ半分
乾燥マリーゴールドの粉(サフランで代用可能) 大さじ半分(サフランの場合は小さじ1か2ぐらいまで減らしてよい。)
クローブ  粉なら小さじ1、ホールなら2粒

作り方
①鶏肉を茹でる。ひたひたぐらいの水を入れ、圧力鍋だと20~30分、普通の鍋の場合は最低1時間煮込み、スープを取る。
②①をやっている間にソースの準備をする。玉ねぎを荒みじん切りにし、飴色になるまで炒める。
ーこのへんで茹で鳥が完成するー
③茹でた鳥の表面に軽く油(本当はクルミ油。オリーブオイルや最悪サラダ油で代用可)を塗って、オーブンを180℃程度に設定し、15分~20分焼き、焼き色をつける。
オーブンがない場合はフライパンで焼く。
④②の飴色玉ねぎと、ソースの材料、ミキサーが壊れないように冷ました鶏のゆで汁350CCをすべてミキサーに入れる。(鳥のゆで汁の量は、下の写真を参考にしつつ、しゃばしゃば目指して入れてください)
⑤焼きあがった鳥にソースをかけて完成!

写真は私が作ったやつ。このときは見たレシピが間違っていて玉ねぎ多めで似ても似つかないものになってしまいましたが、味は激ウマ。
おいしい物が全部つまってるので、失敗することはないはずです。
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下は現地の本物のサツィヴィ。

本当はソースも鳥も冷たくして出すのですが、日本人はあったかいのがいいと思います!

1. はじめに 
私は神話や伝説が好きで、古事記や聖書、少数民族に伝わる話などいろいろな資料を読んでいた。その中で「神々の指紋 (グラハム・ハンコック著 大地舜訳 1999年 小学館)」を読み、世界中にノアの箱舟をはじめとする、洪水で助かった人が一族の始祖となる似たようなタイプの神話が分布していることを知った。世界の始まりの混沌の世界を描いた神話において混沌は洪水であると仮定し、また日本にも多く伝わる天女の羽衣の話も天女が川で水浴びをすることから洪水神話に分類され、世界各地に形を変えて伝わっている。  

今回卒業論文を書くにあたっては 「ツォゼルグの物語 (黒沢 直道著 2006年 雄山閣)」 をきっかけに、現在重点的に学んでいる中国雲南省・東南アジア地域には特に多く伝わっていることを知り、東南アジアを中心に洪水神話・羽衣伝説を集め、比較・検証する。それにあたって旧約聖書、古代エジプト神話、シュメル神話、古事記を比較対象として使用し、その周辺地域の状況も考察した。  

神話は昔は歴史として扱われていた。それゆえ神話内の非現実的な出来事などは何か現実に起こった出来事を象徴しているという考え方がある。それに沿って中国雲南省・東南アジア周辺に伝わる洪水神話に多く見られる兄妹始祖・人類文化起源型の洪水神話の主要なモチーフである洪水・水、インセストタブー、瓜・ひょうたんについて多角的に分析を加えた。 

以上の事柄を踏まえながら、洪水神話の神話における位置づけ、歴史的・また文化的な役割を私なりに導き出していこうと思う。 
  
2. 洪水神話とは 
2.1.起源 

 洪水をモチーフにした神話。 
洪水神話の最古の記述はシュメール・メソポタミアの石板(シュメル神話・ギルガメシュ抒情詩)である。メソポタミアの王は自らを神々になぞらえ、戦争で町を水浸しにして攻めたりもした。 

洪水神話には3種類ある。 
① 世界起源神話 
これは世界の起源を記した神話において、世界ができるまえの「混沌」とか「どろどろしたもの」とあらわされるものを洪水であるとする説。 

② 人類起源神話 
神々が人類を創造し、発展させる過程で洪水的なモチーフがちりばめられている神話。 
Ex. 中国においてはの兄妹の神々、伏羲と女媧がどろをこねて人類をつくり、天が壊れて水があふれたとき五色の石を使って補修した。 

③ 文化起源神話 
主に洪水で悪人が一掃された世界において、兄妹・または男性と天女が民族と文明の始祖となるタイプの神話。 

神話のモチーフとなりうる2種類の洪水 
・地域的大洪水説 
 ある特定の地域のみで洪水が起こったとする説。非常に現実的で、一番信憑性がある説とされる。 
 すべての四大文明は大河のほとりからおこっている。人類は川のほとりで狩猟を始め、農耕を始めた。川は定期的に氾濫した。そのたびに人々を襲い、また水が引いた後には肥沃な土が運ばれて豊穣をもたらした。一番古い記述とされる石版が発見されたメソポタミアでは地震や雷よりも洪水が一番怖いものとされてきた。 
 そして洪水を恐れる概念は、金属と農業の伝播とともに世界に伝わったと言われている。 
 たとえば紀元前2900年ごろにユーフラテス川で大規模な洪水が起こったという記録と、考古学的証明がある。 

・地球大洪水説 
 地球全体を包むような洪水、または津波があったとする説。隕石または地殻変動があったとされる。これによって神話すべてを実際に起こったものとして考えることができる。
一説によると、洪水以前の地球は何らかの化学物質で覆われており、大きな災害に伴う洪水を機にその物質が失われていったとされる。その物質は太陽から地球に降り注ぐ有害物質から人間を守ってくれていたので、当時1人約1万年生きることもまれではなかった。その物質が失われてから人間の寿命は現在に近づいてきた。旧約聖書の創世記やシュメール神話に記されている当時の王や当主が異常に長寿だったのはこれが原因だとされる。 
だがこれらを歴史的・考古学的・地学的に証明するものがないため、信ぴょう性は極めて薄い。 

  中国南部・東南アジアに多く伝わるのは③文化起源神話が多いので、文化起源神話・特に兄妹が主人公のタイプと天女が登場するタイプに焦点を当てて行こうと思う。 

2.2. 洪水神話の種類 
・兄妹婚姻 
主に貴州省などに伝わる。 
① 兄弟がいい事をする。 
② 神様が洪水から助かる方法を教えてくれる。 
③ ・石の亀の下に隠れて助かる 
・石のライオンの下に隠れて助かる 
・太鼓など、空洞の物の中に隠れて助かる 
④ 神から結婚するよう言われる。 
・すんなり結婚する 
・ほんとにしなければならないか、数種類の占いか試練を経る。 
⑤ よくわからない物が生まれるので、川に流して捨てる 
⑥ 子孫が繁栄する。 
・子供を産む 
・泥人形を作る 
※伏羲と女媧の兄妹とする話も多くある。 

≪兄妹神話の分布≫ 
主に中国貴州省とミャンマー西部のチン州に多く分布する。これらの地域に共通するのは、山がちで、棚田が多く作られ耕作が盛んなことである。 
稲作は仏教とともに伝来したので何らかの関係があるか? 

・1人だけ助かる 
 ①いい事をする 
・乞食に化けた神様に、いい人が施しをする 
・神様にお供え物をする 
 ②神様が洪水から助かる方法を教えてくれる 
天女と結婚し、民族が発展する 
 ③助かった人が男性の場合、天女と結婚する。(結婚のための試練あり) 
※2.2.1羽衣伝説、①嫁にされるパターン参照 

人間が天女と結婚する場合の神話の分布図 


 四川省南部から雲南省北部にかけてみられる。 
この話が伝わるナシ族・イ族共に同じ語族に属し、水稲耕作が盛んである。 

・沈む 
・島が沈む 
長崎・タイなどに伝わる。 
神様の顔の像があり、それが赤くなると島が沈む、洪水が起こるなどの伝説がある。ある時誰かがふざけて赤く塗った。島の人は皆船に乗って逃げた。島は地震や津波や洪水などで沈んだ。 
伊勢にも沈んだ島があり、島民は船で逃げた。神聖な島であったという説もある。江戸時代の地図にも残っており、現在はテレビ局によって遺構が発見されている。 
・村が沈む-津波の話 
沖縄・宮古島地方に伝わる。 
 ☆助かるパターン 
漁師たちが人魚を捕獲する。裁こうとしたら、悲鳴をあげたので助ける。すると感謝した人魚が津波を予告して帰っていく。村人は助かった。 
☆助からないパターン 
捕獲した人魚をさばく。屋根の上に干している時、人魚が母である海に助けを求める。急にその家の子供が泣きだし、その子と乳母だけ遠くへ行く。津波が来て村が全滅する。人魚は津波と一緒に海に帰る。 
 ☆王様の呪術比べ 
宮古島の王様がとなりの島に津波を送る。となりの王様がその津波をそのまま宮古島に返す。宮古島は壊滅的な被害を受ける。 

・羽衣伝説 
日本中に伝わる天女の羽衣伝説は、ユーラシア大陸全土に伝わる。それらは大まかに2つに分けられる。 

① 嫁にされるパターン 
・男が川で水浴びをしていた天女の衣を取って帰れなくする。そして嫁にする。 
その後天女は衣を見つけ、天に帰るが 
・男の留守中に自分で見つけるパターン 
・子供の指摘で見つけるパターン  がある。 
多くはそのまま帰って終わりだが、まれに「寂しそうな男を不憫に思った父神が、男を天に呼び寄せる」といった後日談が伝わっている場合がある。 
   
  ②嫁になるパターン 
   天女・または神の娘が洪水で生き残った人間の男性と結婚し、子孫・民族を繁栄させるパターン。 
   ※2.1.2. 1人だけ助かる参照 

③利益を与えるために来たパターン 
・老夫婦の子供になる 
 寂しい老夫婦の子供になり、洪水が来たときに家に居ずに心配をかけたことに責任を感じて家出し、川を流れて行った先で出会った男と結婚し、子孫を繁栄させる。 
洪水と羽衣伝説が完全にくっついたもの。 
・よく働く嫁になる 
 ・最初に出会った男と結婚する宿命にある、と告げられ、貧しい男と結婚し、毎日魔法を使ってご飯を用意するが、あるとき男が秘密を暴こうとしたので、洪水対策を知らせて天に帰る。 
 ・借金に苦しんでいた働き者の男性を憐れんだ神が、嫁となってよく働くよう言いつけて天女を遣わす。天女は布を織って10日で借金を返してしまう。 

・流す系 
☆奇形児を川に流す 
兄妹などが結婚してできた奇形児を川に流す。ラフ族だけでなく古事記の伊弉諾・伊佐那美も同じことをする。 
☆英雄が流れてくる 
一寸法師、ももたろう。ひょうたんや瓜が流れてくる伝説もあり。エジプトではモーセも。 
  
洪水神話と個々のパーツ 
3.神話 
神話とは、ヒトが認識する自然物や自然現象、または民族や文化・文明などの事柄を、世界が始まった時代における神など超自然的・形而上的な存在や文化英雄などとむすびつけた一回限りの出来事として説明する物語であり、諸事象の起源や存在理由を語る説話でもある。このような性質から、神話が述べる出来事などは、不可侵であり規範として従わなければならないものとして意義づけられている。(Wikipedia 12月13日アクセス) 
また神話は歴史とは全く別物で、神話は自民族について述べているものであり、歴史は他民族との戦争など交流の記録である。 

神話を収集する際の従来の収集後の研究方法は 
① 順序良くならべること 
蒐集した神話を蒐集した人の主観でクロニクルで並べる。 
② 他の神話との比較すること 
同部族の異なる神話又は隣接する部族の神話との類似点・相違点を比較する。 
である。 
だが実際、蒐集した神話を時系列ごとに並べるという作業は、話者からの情報によるものではなく、大体の場合は話者とは違う文化で育った蒐集者の主観によって行われる。そのため時代が間違っていることもある。 
ほかの神話との類似点・相違点は確かに存在するが、神話には高度の反復性が生じる。よって、基本構造や事件の型は同じでも、細部は異なるのでまったく異なる事件を述べている場合がある。さらに他民族との交流によってもたらされた異文化の神話に触れ、気に入ったくだりを自分たちの神話に組み入れて、将来的に反復させて使っていることもある。
例えば、古事記・日本書紀には中国・東南アジアの神話と多くの類似点がみられる。そこに登場するアマテラスは新嘗を主催し、豊穣の女神としてもまつられていることから、稲作と同時期にこの神話が日本に渡来した・もしくは変化した可能性がある。だが中国・東南アジアの兄妹神話に酷似するイザナギ・イザナミのくだりでは洪水が登場しない。このことから記紀に記されている神話は、中国東南アジアで稲作が起こり、いまだ中東の文化・伝説が伝わっていないころのものなのだろうと推測される。 
また、同じ民族の神話で、世界創世の時点で洪水があり、またその後発展の時に洪水がおこる、というものもある。 

・神とつながる王 
 王は度々自らの権力を確固たるものにするため、神とのつながりを強調することがある。古代エジプトの王は神々と同列に並ぶものであり、臣民へ「神聖なエネルギーを含んだ神秘的な力」を発し、超自然的な力が集積し、かつまたそれを発出する者であった。 
 また、ヨーロッパにおいて、王の手には治癒力があるとされた。これについてフロイトは「王に触れることと王から触れられることは違う。王は望まれているから治す力を持つ。」(要するに人民が信じることが大切である)と述べている。 
 古くから王の即位は王の新生だけでなく、世界の新生でもあると考えられている。これは過去の忘却ではなく原始への回帰であり、衰弱によって不幸をもたらしたものと今なおもたらし続けているものを廃止することである。洪水神話で世界が再生し、新たな始まりという点が強調されているのは、王政が新しくなったことを暗に表しているのではないか、と私は考える。 
  
4. 水 
・アルケー 
 ギリシャのミレトス学派の始祖・タレスは、万物の根源であり、存在するものすべてが水から生まれ、水に帰すると説いた。また、世界は水に浮いており、地震はその水の中の波の振動によって揺り動かされるときに地震が起こると信じた。これはバビロニアやエジプトにも見られる考えであるが、タレスは神々を除外して考えた。 
G.E.Rロイド著1994年「初期ギリシア科学―タレスからアリストテレスまで」山野耕治・山口義久訳
 


・宗教での水 
すべての生命の源であり、芽生えをもたらすものである水は奇跡的な誕生や再生の象徴として最もふさわしいもののひとつである。たとえば水中に沈むキリスト教の洗礼がある。また司祭によって聖成された水は聖水として、病をいやすためなどに用いられる。 
また多くの宗教書に書かれているのが川や湖への新生児遺棄のエピソードである。たとえば旧約聖書のモーセのくだりである。 
タイ仏教においては、旧暦の新年に水かけ祭りを行う習慣がある。 

・水に対する認識 
 人類の文明は農耕牧畜文明というものが主流で、8千年から1万年前の西アジア地方で起ったとされる。これによって人類はそれまでの狩猟採集生活で得た富の何百倍もの富を得ることができるようになり、約5000年前に四大文明が生まれた。 
1. チグリス・ユーフラテス沿いのメソポタミア 
2. ナイル流域のエジプト 
3. インダス 
4. 黄河。 
の順である。 
  
以上のことから水は人々にとって洪水や死をももたらす脅威である反面、豊穣をもたらすという2面性をもつものであると認識されていると言える。 
  
5.瓜・ひょうたん 
☆兄妹は瓜やひょうたんの中に入って洪水を生き延びる。 
 伝わっている主な民族:ペー族、プーラン族、ラフ族、ワ族、イ族 

瓜は水がたくさん入っているものの代名詞のように故事成語にも使われてきた。またひょうたんは、水を入れる容器に、また縦に割るとひしゃくになる。ひょうたんの中に入れた作物のたねは必ず芽を出す、といった言い伝えもある。 
ひょうたんは人類創造故事の核心である。水を避ける道具には鼓、桶、臼、箱、甕、船、カボチャなどがあるが、これらは修正の結果であると考えられる。 

・伏羲・女禍 
  瓜・ひょうたんの内部で生き残る兄妹は伏羲と女禍が圧倒的に多い。その理由として「伏羲」という名前の「伏」の部分が古来ひょうたんを意味し、「女禍」の「禍」は瓜を意味したという説がある。 

・瓜が指し示すもの 
① 卵 
 伏羲と女禍は雷神の子供・孫・または親戚であったという説がある。雷神は雄鶏の姿をしているので、卵の形を模している、という説。 
② 胎盤(胞衣) 
 世界中に胞衣に対する信仰がある。胞衣には呪力があるといわれ、日本では胞衣を神社に奉納したり、家の土間に埋めるなどという習慣があった。中国では胞衣に包まれたまま生まれてきた子供は育ちにくいが、育った暁には王になったり出世をする縁起の良い「富貴」と呼ばれた。またヨーロッパでは、胎児は母親の胎内の羊水(海)中でおぼれないのは、胞衣が包み込んで守ってくれたからであるので、そんな胞衣は水難事故のお守りとなった。 
 古事記の神武天皇の冒険に原型を見ることができる桃太郎伝説の桃や、天女の羽衣伝説の羽衣、また赤ずきんちゃんの赤ずきんにも胞衣信仰の一端を垣間見ることができる。 

・洪水発生装置としての瓜 
 【中国の七夕伝説】 
天女であった織女との結婚を天帝に乞いに行った牽牛は、天帝の怒りに触れる。織女は牽牛を助けようと入れ知恵するが、ピンチに陥った牽牛は織女にもらった瓜をうっかり切ってしまう。すると瓜から水があふれ出て洪水がおこり、天帝から逃れることはできたが、織女とも離れてしまい、その後二人は1年に1度しか会えなくなった。 
  
6.女媧 
女媧は中国第一の女神であり、偉大なる母神である。伏羲とセットで語られることが多く、その場合は伏羲が兄で女媧が妹であり、洪水で生き残った兄妹の結婚により繁栄した子孫が部族を作る、といった話になる。 
だが秦時代の文献「天問」「山海経」、漢時代の文献「説文解字」「准南子」「風俗通義」において女媧は独立した女神として描かれているが、唐代の「独異志」などにおいては兄である伏羲と結合して夫婦神として描かれ、洪水遺民兄妹婚神話へ発展したようである。 
その例として 
・河南省北・西・中央部 
女媧単独で天を補修、洪水や結婚のくだりは描かれていない。 
 ・河南しょう東南部 
伏羲女媧兄妹婚は伝わっているが、天を補修するくだりは描かれていない。 
 以上からこの地方での民族融合がみられる。 

女媧の功績 
① 人を繁栄させる 
 ・黄土をこねて人間をつくる 
 ・その後の人間の結婚をつかさどる 
  石臼を転がす、糸を針の穴に通す、二筋の煙が交わる、竹を切るが元の形に戻る、といった「結びつく」「くっつく」など結婚を連想させる様々な儀式を始めた。 

② 天地を修繕する 
天を支える柱だった山が折れて天が傾き大洪水が起こったので、それを食い止めるため五色の石を使ったがそれでも足りず、青ガメの足を切って支え、灰で割れ目をふさいで洪水を止めた。 

③ 笙簧(楽器)をつくる 

【笙簧】17個の菅がありそれを細い糸で固定する。やかんの口のような形の部分に口をつけ、息を吹き入れたり吸いながら演奏すると高さの異なる16の音がでる。また、古来楽器の下の部分はひょうたんで作られていた。 
(伝わっている民族;ミャオ、トン、スイ、ラフ、リス、タイ、イ) 
この話が伝わる民俗の多くには蘆笙を奏でながら男女が愛情を通わせる風俗が存在する。

【例1】 
ミャオ族:若い男女が各村落間で訪問しあい、蘆笙の音を競い合う習俗。男性が笙簧を奏で、女性が舞うという習慣がある。 
ミャオ族の女神コウソが万物を創世した後、人間に娯楽を提供するために、自分の指を切り落として蘆笙を作ったことから「蘆笙はミャオ族の母親」と言われる。 
また「山海経」(中国戦国・秦・漢時代の地理書。当時の伝説への見解をよく著す。)によると「伏羲女媧の出自はミャオ族である」とある。 
ミャオ族に伝わる七夕の話では、牽牛は織女の羽衣を隠し、織女を妻にする。あるとき羽衣を見つけた天に上った織女を追いかけて織女の父である天帝に結婚の許しを乞い、天帝の怒りに触れる。織女・牽牛とその子供たちは銅鼓に入って天帝から逃れ、地上で幸せに暮らす。銅鼓をたたいて地上到着を知らせたことから、銅鼓と蘆笙で踊る習慣が生まれた。 

【例2】 
チベット族(原始的か):女媧が万物を創成したが、話し相手はおらず、さみしかった。河原で出会った少女におもちゃとして蘆笙、簫を作ってやる。やがて彼らは増え、女媧を「お母さん、おばあちゃん」と呼ぶようになる。その後女媧は怪龍を退治し、天を魚の足で修理すると同時に死ぬ。 

これらのエピソードより、男女が愛情を通わせる場は「蘆笙神話文化の蓄積された場」を形成し、血縁性、地域性をもつと言える。  
以上のことから蘆笙づくりは人類の繁栄を意味し、人を作った、懇意制度を定めたという功績に相応する。伏羲と女媧がともにひょうたんの中で洪水を避けて再び人類を作ったことを意味する。 

7. インセストタブー 
神話の中には通例として、近親婚のモチーフが出てくる。さらに多くの場合、世界そのものや人類、宇宙、もしくは文化を構成する主要な要素を生成させる役割を果たしている。このように近親婚は重要な意味と役割を付与されているが、人類共通のタブーであり、このタブーなくして文化もあり得ない。またこのタブーの審判が世界秩序の根本に抵触する大罪であることも神話の中で強調されている。タブーに触れ、世界秩序を混乱させる行為として厳しく弾劾される一方で、非常にしばしば秩序それ自体もしくはその不可欠の部分をなす要素を生み出す働きをしたと物語られている。つまり世界や人類、民族、文化などが想像され宇宙の成立する過程において近親婚は通常は不可避とみなされ積極的な役割を演じるが、いったん世界秩序が確立されればその秩序の中では近親婚は一転して不可侵なタブーとみなされ、その侵犯は世界の根幹を揺るがすと考えられる。これは一見矛盾した理論に見えるが、世界が生み出されるためには世界を超えた原初的・根源的な力の発動が必要であり、この力は世界が成立する以前にそれを生じさせるために働くものである以上、世界が成立した後のその内部を律する規範に束縛されることはない。 
世界を生み出す過程で根源的な力として作用すると認められる近親相姦はまた、既成の秩序が何らかの理由で転覆され、または更新されねばならぬ時にも、転覆・更新を果たす原動力となる。神話伝説の中では時に確立し、もはや尋常な手段では倒伏できぬ体制を破却するため必要な異常の力量を備えた存在を出征させる目的で近親相姦がいわば最後の手段として刊行されたことが物語られる。 
近親相姦によって生み出されたものは異常者・規格外の存在となるため、秩序の中に安住はできない。 

 主要な宗教における近親婚の扱い 
・キリスト教 
旧約聖書・創世記における近親婚の有名な事例はアダムとイブである(アダムの肋骨から生まれたイブを双子の妹であると考える)。また、アブラハムは異母妹と結婚している。
だが、レビ記においては「肉親の女性に近づいてこれを犯してはならない。…」(18章6節)という節に続き、性的関係が禁じられる近親者が挙げられている。血縁関係では母、姉妹、孫娘、父方・母方のおばが、姻戚関係では父親の妻(継母)、父親の妻の娘、おじの妻、嫁、兄弟の妻、妻の連れ子、妻の連れ子の娘、妻の姉妹が挙げられている。 
それ以降、会議などで定義は揺れうごき、結局「近親者」という表現にとどまった。 

・イスラム教 
イスラム教成立以前のアラブでは、血は濃ければ濃いほどよいとされていたが、現在はコーランによっていとこ婚まで認められている。 

・仏教 
仏教における近親婚禁止の記述は認められなかった。むしろ、日本霊異記に近親性交の記述すら認められる。 

 近親婚とその代表的な事例 
・エジプト王家 
神話の時代から近親交配を繰り返した。いとこ関係やおじ・おば・めい・おいだけでなく、実の兄弟姉妹とも結婚した。以前は形式的な結婚であると思われていたが、遺伝子を鑑定した結果、実際に結婚して子供を作っていたことが判明。 
理由1 神話をなぞって王の権威を示すため 
理由2 財産拡散を防ぐため。 
≪エジプト・アマルナ王家の家系図≫ 


・ハプスブルグ家 
特にスペイン・ハプスブルグ家はアルゴン王国時代からおじ・おば・めい・おい、いとこ同士などの婚姻を繰り返した。その結果、あるとき遺伝子疾患がおこるが近親交配のため治ることもなく、カルロス2世は心身共に障害を持ち、2度結婚するも子供が出来ずに断絶した。 
理由1 王の権威を示すため 
理由3 財産拡散を防ぐため 
理由2 血の純潔を守り、一族の団結性を高めるため。 
≪スペイン・ハプスブルグ家の家系図≫ 
生物学から見る近親婚 
ウエスターマークの仮説によると、霊長類以外の動物は、生まれながらに近親者を識別できる能力がある。 
霊長類には近親者識別能力はなく、幼いころから交流のあった異性とは結婚したがらない。実際にニホンザルやチンパンジーによる実験では、血縁でなくても幼いころから世話をしている・されている関係では婚姻を避ける傾向にあった。 
また、離れて暮らした血縁同士が成年して再び会うと、通常より激しい恋愛感情を起こすという仮説がたてられており、現在研究がすすめられている。 
ある特殊な環境においてはインセスト同士の婚姻が起こるケースがある。兄と妹、姉と弟の関係は孤立した、あるいは雑居的居住環境の中で生じる傾向がある。 

昔から近親婚が禁止されている理由は、上記以外に以下のものがあげられる。 
1、人間は昔から女性の交換によって共同体・社会的地位を築いてきた。そのさらなる発展のために近親婚が禁止されている。 
2、近親婚では心身への障害や遺伝子疾患、虚弱体質などの不利な面がたくさんある。ということは近親婚によって遺伝的弱性が生まれるならば、近親婚は明らかに不利ということになる。 

 近親婚はタブーであるにもかかわらず、古来からなくなることはないのは、ごくわずかではあるが利点があるからである。 
1、 血縁者と設けた子供のほうが自分と血のつながりが濃い。よって多くの遺伝子のコピーを残せることになる。 
2、 生態的・経済的な条件(要するに幼いころから一緒に住んでいること)から、早くから繁殖を開始することができる。よって、より多くの子供を残すことができる。 
以上を考慮すると、まったく近親婚が起こらないよりも、少しぐらいあるほうがより多くの子孫を残せることになる。 

★洪水で周りにだれもいなくなった状況は、上記の特殊環境(孤立)に分類され、兄妹婚が起こってもなんら不思議はない。 
東南アジアに伝わる神話において、2人とも悩んでなかなか結婚しない傾向がある。これは一緒に育った兄妹であるからではないか。 
 また、波照間島に伝わる創世神話の兄妹の神々は、別々に育ち、それとは知らず結婚する。東北に伝わる双子の兄妹の神々はお互いに惹かれあいすぎて死んでしまう。この地方では男女の双子は別々に育てて将来結婚させてやる風習があった。 

社会人類学・文芸的な視点からの近親婚 
法は人々が欲する者を禁止する、という格言がある。それと同じように神話と習俗は逆立する。神話の中のことは一般の人々にとってタブーなのである。 
人の社会は親愛の情を抱くことで家族として認識するが、それとは真逆に位置する近親婚がタブーであるがゆえに、逆に人々に憧れを抱かせることになっているのではないか。 
吉田敦彦は著書の中で以下のように語っている: 

世界の神話の中で近親相姦はこのように、タブーに触れ、世界秩序を混乱させる行為として厳しく弾劾される一方で、また非常にしばしば、秩序それ自体もしくはその不可欠の部分を成す要素を生み出す働きをしたと物語られている。つまり、世界や人類民族文化などが創造される過程において近親婚は通常不可避とみなされ、非常にしばしば積極的な役割を演じるが、いったん世界秩序が確立されれば、その秩序の中では近親婚は、一転して不可侵のタブーとなる。(吉田敦彦、1982年「神話と近親相姦」青土社) 

★人はないものにあこがれる。 
  
8. 考察 

  洪水神話は新しい王政の始まりを書き記したものではないか。 
  ○章にて述べたように、神話とは元となる話に自分たちの都合のよい、好きな話をくっつけて作られたものである。元となる神話は女媧一人が主人公になるもの、伏羲と女媧が主人公になるもの、各民族の英雄・王または神話の人物が主人公であるものだっただろう。 

まずメソポタミア地方から伝わったか、自分たちの経験か別の伝説にある洪水を結びつけた。これは伝わったという色が強いことから決して地球規模の洪水ではなく、地域的な洪水であると考える。水はメソポタミアやエジプトにおいて誕生を意味するものである。そのためユダヤ・キリスト教の洗礼の儀式においても使用される。また洪水はメソポタミア・エジプトにおいて地震や雷よりも恐れられているものであると同時に再生の象徴としてもあがめられている、うってつけの材料である。 

  次にインセストタブーを結びつけた。どんな動物においても近親婚は生物的にタブーとされている。だがタブーを作り出し、定義するという神話の特性を利用して、あえてインセストタブーを自らの神話に取り入れることで、自らの先祖は神であり、常人とはちがうことを強調した。これはエジプト王家においても取り入れられていたことである。そのなかで伏羲と女媧は格好の材料であった。 

  またインセストタブーと結びつかなかった神話は、天女の羽衣伝説と結びついた。この種の神話は自分たちの民族の出自が神とつながりがあり、権力を確固たるものにする強力な材料の一つであったのではないだろうか。 

  その後洪水が起こり、伏羲と女媧は瓜やひょうたんの中に入って洪水から逃れる。瓜やひょうたんは東洋の洪水神話特有のモチーフである。特に女媧はうりやひょうたんとの結びつきが強く、女媧が作った楽器であるとされる蘆笙もひょうたんが使われている。その源流は○章で書いたように胞衣信仰にあるのではないか。胞衣をまとったまま生まれた子供は成長することができれば王など人の上に立つ存在になるという伝説が中国をはじめ日本にも伝わっている。 

  以上のように洪水神話は新しい王・王権が誕生する様子を、神々と同じ新生児の異常な誕生になぞらえている。そこから自分たちの祖先が生まれ、自分たちは神とつながっているということを確認するためのものだったのではないか。また、神話と歴史は根本的に違うもの(歴史は他国との交流・戦争の記録であり、神話は別次元のもの)であるが、昔日本では古事記が歴史書として扱われていたこと、また洪水が混じる以前の中国の兄妹婚神話が日本に(おそらく稲作とともに)伝わっていることを考えると、当時これが中国雲南省および東南アジアの民族においては歴史として扱われていた可能性もある。洪水神話は決していかがわしい不思議な話の類などではなく、個々のパーツの出所と伝わった時期を特定していくことで、その民族の当時の考え方や交流のあった民族、また歴史までも解き明かしてゆく貴重な資料になりうるものである。

参考文献

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